目次
100年時代の人生戦略
この本は、「100年時代の人生戦略」として長寿化が進行している現在、いかに100年を生きるかということをテーマとしています。
今の日本は、平均寿命が年々増加し、定年年齢も引き上げられつつあり100年生きる人もめずらしくなくなっています。
内閣府の「平均寿命の推移と将来推計」平成24年によると、2060年には、男性84.19年、女性90.93年となり、女性の平均寿命は90年を超えると見込まれています。
近年の健康、栄養、医療、衛生といった多分野におけるイノベーションには目を見張るものがあり、平均寿命はこの将来推計を大きく上昇し、2007年生まれの50%は107歳まで生きると推測されています。
ここで重要なのは、平均寿命と共に健康上問題なく生活できる期間である健康寿命も延びるということです。
認知症の解明と対処にも、今後大きな前進があると目されており、想像以上に長く生きられる可能性が高いのです。
「マルチステージ」の人生
この本は、引退後の資金問題や健康、人間関係といった単純な問題を取り扱う本ではありません。
これまでは、「教育→仕事→引退」という3つのステージの人生を歩んできました。
しかし寿命が延びることによりステージの移行を数多く経験する「マルチステージ」の人生へと変化すると筆者は言います。
AIが導入され新しいテクノロジーが労働市場を激変させていくことは明らかです。
すると産業の新陳代謝が起こり、新しい職種が既存の職種を代替することになります。
そうなるとキャリアの初期に身につけた専門技能を頼りに、長い勤労人生を生き抜くことが難しくなるだろうということは容易に想像できます。
それは転職する回数が単純に増えるということではなく、新たな3つのステージが登場しそれらを数多く移行する人生が到来するということです。
新たな3つのステージ
1つ目は、一ヵ所に腰を落ち着けることなく、身軽に探検と旅を続け、幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」です。
2つ目は、組織に属さずに、自由と柔軟性を重視して小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」です。
3つ目は、異なる種類の仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」です。
これらのステージについては、本の中で詳細に述べられています。
今後は、ステージの移行回数が増えていくため、移行期間に向けた事前の準備が欠かせなくなります。
事前の準備として、この後に述べる「見えない資産」に投資することになりますので金銭的資産が減ることは避けられません。
キャリア選択とパートナーシップ
ステージの移行では、キャリアの選択肢だけでなく、パートナーシップのあり方も問い直されなければなりません。
夫婦が二人とも職を持つ家庭が増えると同時に、いずれかがステージを移行する際に、互いの役割を柔軟に調整し、サポートし合うことが求められます。
すると必然的に家族のあり方、人生の選択肢が多様化しどのように人生を計画するかが問われるようになります。
「女性は家を守り、男が外で稼いでくる」といった昭和的な考えにとらわれず、役割を見直す夫婦が見られるように、どちらかの仕事が大変な時は、もう1人が家事や育児を担い、交代でキャリアを積み上げる等です。
また生涯を通じて、複数の新しいスキルと専門技能を獲得し続けることが重要になってきます。
「見えない資産」
引退後の資金問題と同様にスキル、健康、人間関係といった「見えない資産」をどのように育くめばよいか、という問題に直面すると著者は見ています。
健康は資産だと漠然と思っていた50代の私にとって「見えない資産」の定義と「新たなステージ」との関係に思わず唸ってしまいました。
家族や友人関係、知識なども「見えない資産」に分類され、それ自体が有意義な人生に不可欠であるだけでなく、有形の金銭的資産の形成を助けてくれるのです。
両方の資産のバランスをとることが、相乗効果をねらうために必要になるのです。
長寿化の観点から重要とされる「見えない資産」は、生産性資産、活力資産、変身資産の3つに大別できます。
生産性資産とは、生産性や所得、キャリアの見通しを向上させるのに役立つ資産を指します。
活力資産とは、人に幸福感をもたらし、やる気をかき立てる資産を指します。
変身資産とは、人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意思と能力のことを指します。
これらの資産については、本の中で詳細に述べられています。
これら3つの「見えない資産」に投資を続け、自らを再創造することが、充実した100年ライフを送るカギとなるのです。
まとめ
「100年時代の人生戦略」として今後どんな時代が訪れ、どんな生き方を模索すればいいのか。
その際、どのような有形、無形の資産が重要性を増すのか、どんな人間関係を築いていけばいいのか。
この本は、こういったテーマと向き合うための手がかりを、豊富な「人生のケーススタディー」とともに与えてくれます。
そして、「自分は何を大切に生きているのか」「何を人生の土台にしたいのか」と自問することで、自分らしい人生の道筋をより現実的に描く助けとなる一冊です。
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